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それから2年が過ぎ、ルジートは10歳になった。
馬術はすでにポニーでのギャロップまでは自分の物にしていたため、馬での訓練が始まっていた。
剣術のほうは、やはり女子ということもあり振り回せる武器の重量に限りがある。
短剣、レイピアはマスターし、これから長剣の訓練が始まろうとしていた。
学問では経済を学び始めたのがこの年である。
木登りはネコ科の動物のようにするするとできるようになっていた。
豊かな黒髪も伸び、少しきつい印象の顔立ちは祖父の国王の面影が色濃く残っている。
暇をみては、馬に馴れるためと、色々な町へ繰り出すのがこの頃のルジートの楽しみであった。

アレキサンドリア公爵の屋敷から東北東にある炭鉱の町サンドリアと、その南にある領の中心となる町ルカダンは、 ルジートが生まれる前から比べるとかなり賑わっていた。
アレキサンドリア公の思惑が功を奏したのである。
大量の作業人が王都や他領からこの領地に流れ込んだため、当時に比べると領民の数は2倍となっていた。
町に溢れていた年頃の娘たちは、元は余所者とはいえ夫となる男たちを得て、無事子供たちを出産した。
これが領全体を活性化させたといってもいい。
炭鉱の町としてサンドリアの町は一気に人口が増加し、大きく発展した。
男たちはサンドリアの町のさらに南東にある古くからの鉱山で働き、女は子供達の世話に手を焼きつつ、自分達の食べる分の作物を作るのを仕事としていた。
この年にはすでに北にある新鉱山でも本格的な採掘が行われており、調査も含め難航していた分を取り戻す勢いであった。 王都の派遣した特殊な調査隊は、その名の通り特殊であったようである。
新炭鉱の手前には集落も出来、新炭鉱の労働者が住む町として今後の発展が期待できそうであった。
また広大な領であるアレキサンドリアは山脈も多く、林業も栄えていた。
大きな町は中心であるルカダンと炭鉱の町サンドリアしかなかったが、山脈の裾野に中規模な町や村は数多くある。
そちらは完全な自給自足なだけに、治めている貴族が領主のような扱いであった。「アレキサンドリア公爵」の顔など、貴族の屋敷や、 庄屋の家で何代か前の肖像画を見たことがあるという程度の領民が大半で、公爵家は遠い存在であった。
むしろ、この活発な公女のほうが、商人や吟遊詩人により人々の口の端に上っていたため、父の公爵より近い存在として多くのものに知られているかも しれなかった。
アレキサンドリアの者はこの小さな次期領主を「姫さん」と呼んで可愛がった。
いずれはこの領を支配する者になるのだが、その意識は無いのかそれともまだ子供だから