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4人の行進は邪魔されることなく、夕刻には件の宿場町リオネに到着した。
4年前に比べると、人口も増え規模が大きくなっているのが分かる。
まず家屋を含む建物の数が3倍に増えているのだ。街の入り口から街を左右に分断する大通りの他に、前には無かった中通りが 左右に2本出来ていた。入り口横には大規模な馬の預かり所もあり、20人程乗れそうな大きな幌馬車が8台ほど置いてあるのが見える。
霧の近くでは魔物や獣に襲われることが多いため、少し離れた此処にアレキサンドリア公が町を作らせたのだ。 あの幌馬車は、その霧に半分飲み込まれている新鉱山に人足を運ぶために用意されたものだろう。 夕刻にもかかわらず通りにはこれから仕事に向かう人足で溢れていた。
そんなリオネの町は、『公女の帰還』にハチの巣をつついたような大騒ぎになった。
何せ現実になりそうで誰もが怖くて口には出せなかったが、心の片隅で公女は既に亡くなっているかもしれないと思っていたからだ。
髪の色こそ違ってはいたが、この鎧にこの瞳の色、さらに変わらないその顔に、町の者は公女と一目で気付き駆け寄ってくる。 4人はあっという間に囲まれ身動きが取れなくなった。
歓声と拍手が鳴り止まぬ中、鎧の女騎士『公女ルジート』は霧に入る前と変わらず声援に笑顔で応じ手を振った。

ほどなく、町民の垣根を押し分けてやってくるものがいた。
身形のよい小太りな壮年の男である。人波を掻き分けてくる間にくたくたになっているが、その顔に見覚えがあったルジートは、 名前を必死に引っ張りだした。
4年前も、確かこの男が町のまとめ役だったはずだ。
小太りの男は噴き出す汗を拭おうともせず、息を切らせながら頭を下げた。
「ルジート公女様…いつ霧からお戻りになられたのですか?!」
「いや先ほど霧からようやく出られたんだ。ああ、この3人は霧の中で知り合った友人だ。悪いが私達は正直言って疲れている。 今日はここに泊まりたいのだが、セルゲイ、開いている宿はあるか?」
「もちろん!もちろん、ございますとも!!ご用意いたします!!それまではどうぞ我が家でおくつろぎください!!」
名前を覚えていてもらったことがよほど嬉しかったのか、まとめ役のセルゲイは興奮気味にまくしたてた。
「ああ、そうだ!公女様が戻られたことを、レンバー男爵様にお伝えせねば!!」
うっかりしていたとセルゲイは汗と脂で光っている額を叩く。
眉を寄せたルジートは聞き直した。
聞き慣れない名前がセルゲイの口から零れたのである。
「レンバー?」
「ええ、アレキサンドリア公が病死なされてから、領主代理を務めておられます。この4