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それからまた移動した一行は、夕方にはサンドリアを抜けルカダンの街の前まで到達していた。
屋敷に行く前に町で情報収集をしようとカレルが言いだしたのだ。
翌日町に行くとなると、戒厳令が敷かれていたり、自分達が動けなくなる可能性があるから今日のうちに済ませておいた方がいい、 と、ぽつりとカレルは言った。
カレルの言葉に頷いた一行は、ルジートが子供の頃よくお忍びで行っていた、この領で一番大きな町ルカダンで情報を得ることにしたのだ。
「ルーが目立つと動きにくいかもしれん。」
子爵の遺品の中からフードつきのマントを抜くと、カレルはルジートのマントと交換すべく支度を手伝った。 フードを引っかけたルジートは、零れおちる白髪のせいか昔馴染みに会っても分かりにくくなっている。 納得したように頷いたカレルがマントと兜を袋に入れ、遺品と一緒に仕舞う。
それから町に入ったのである。
町に入ってすぐの厩に馬を預けた後、一行は広場へと向かった。
大通りに面して商店がびっしりと建っていたが、全てが開いているというわけではなさそうだった。やはり4年の月日の流れは大きかった。
ルジートがよく通っていた頃とは大きく様変わりしている。前はこんな荒んだ雰囲気はなかった。もっと活気に満ち溢れていたではないか。 それでも、宿場町リオネほど建物に影響が出ていなかったのが救いだった。
ルジートは唇を噛みしめながら通りを歩いた。
「あ、洗濯場が見えた。」
通りから左の奥で女たちが洗濯をしていたのが見えたようだ。ヘレナの目が光る。
「歓楽街は右の中通りにあるのか。」
如何わしい雰囲気を感じ取ったセシリスは唇の端を吊りあげた。
「情報収集は2人に任せたほうがいいな。俺はルーについている。」
2人ほど口が達者でないカレルは、早々に戦線離脱を宣言した。
ヘレナとセシリスもその辺はよくわかっているので笑って応じた。
「ええと、潰れてなければ広場の横通りにある飯屋にいよう。知り合いがいる。」
広場を中心に十字に大きな通りがあり、町が4つのブロックに分かれていると簡単にルジートは解説した。
ヘレナが先ほど洗濯場があると言ったのは、屋敷の方角を12時方向とするならば8時の位置になる。炭鉱者の居住区だ。
セスが歓楽街を見つけたところが5時方向だ。炭鉱者用の歓楽街があり、またそこに従事する者たちの居住区でもある。
ルジートが言っていた飯屋はその大きい通りの左側、9時方向にあって、ここは交易中心の通りであった。 交渉に来ているらしい他所の人種が圧倒的に多かった。あまり人間の見分けのつかない3人ですら分かるほど、顔の作りが違うものが闊歩している。 それで