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この街は王都と言うだけあって道幅も広く、往来の人の数も段違いに多かった。 王城前へと続くこの中央の広場までの道沿いは商店や宿場、飯屋が軒を連ねていて大層賑やかだった。しかも玄関や窓に飾ってある季節の花が 通りに彩りを添え、さまざまな香りが道行く人を楽しませてくれる。
セシリスとヘレナはあまりの混雑ぶりに、落ち付かない様子で目を動かしながら歩いていた。
広場の手前には馬の一時預かりをする大きな厩がある。
早速ヘレナとセシリスはそこで馬を預けた。
「私は、お届け物があるでするよ。ではここでおさらばでする。いずれまた逢うことがあればごちそうしてほしいでする。」
丁度、噴水のある広場の辺りでエマは別れの言葉を切り出した。
厩に馬を預けた3人は荷物が少なめな装備である。軽々とした足取りで王城に足を向けた伝書士にセシリスは声をかけた。
「城に行くのか?」
エマはふふふふと笑うと
「いくら気を許した旅の仲間にもお届け先は教えられないでする。伝書士の掟でする。」
と胸を張った。彼女は誇りを持ってこの仕事についている。掟を破ることはしないだろう。
「わかっているさ。気をつけてな。」
と声をかけて2人は手を振った。
ヘレナは笑顔のままぼそりと呟いた。
「よく考えたらさあ、あの町から王城に用がある奴らなんてそうそういないよね。これはくさいからつけちゃえー。セス、一刻後にココね。」
そういうとヘレナは雑踏に紛れ込み、エマの後を追った。
頷いたセスは、これは短期間に任務をこなしとんぼ返りになると確信した。
それならこの金貨の枚数でも安宿なら泊まれるか。
たまにはあのベッドというもので寝るのも悪くない。
セシリスは広場を離れ通りへ戻り、宿屋を見て回ることにした。

王宮の西の端には、出納局がある。
西門の傍にある出納局は、納税をしに来る者でいつもごった返していた。
出納局の窓口が2つに分かれていることも混雑する原因の1つだ。
建物内にある窓口は納税用で、年貢に関しては屋外のテントにて、各領の担当者が受付手続きをするようになっている。 さらに通路では品物の数を確認した役人が蔵に納めていく作業で、ひっきりなしに往来しているため、此処は競りの場に負けないほど活気づいていた。
出納局の業務は納品作業、確認作業、管理作業と三つの作業構成から成り立っている。