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術を破ったと同時にセシリスは咆哮を上げた。
その吠え声は衝撃波となりセシリスを中心に放射状に走った。
音が止む頃には、セシリスの半径50mは鬱蒼と生えていた草も木もなければ、追手の姿もない。
ヘレナ達が身を隠した岩さえも形を失くしていた。
全ては音の衝撃で粉砕され粒になり放射状に飛散していた。
そこに居るのは金色に目を光らせている、亜麻色の巨大な狼に似た魔物が一体だけだ。
その魔物は短く唸ると足元をまず掘り、金貨の入った袋を掘り出した。
中にはルジートのアレキサンドリアの家紋が入ったネックレスが入っている。
証拠を残していくわけにはいかなかった。
それから鼻をひくつかせると、元岩だった砂の小山に近づき、前足で勢いよく掘りだした。
あっという間に砂の隙間からヘレナの紺色の侍女服が見えてくる。
セシリスは咥えると一気に引き上げ、横の地面に下ろした。
地に足を付けたヘレナは大きく全身を震わせた。編み込んである銀色の髪の中からも元岩だった砂がこぼれ落ちる。 お気に入りの侍女服が砂まみれになっていることに嘆息すると、両手で砂を叩き落した。
『大丈夫か?』
魔物の姿に戻ったセシリスがふさふさのしっぽをゆらしながら、ヘレナの顔を舐めた。
ヘレナは見慣れたセシリスの姿に、今後を考えると説教をせずにはいられなかった。
「こんなことして!!ルーに術をかけてもらわないと人型に戻れないのに!!!」
窒息死しかけたことより、まずそれなのか。
呆れたセシリスは耳をピッと後ろに向けると、次に気を失っている森咲も咥えて引き上げた。 こちらも、黒の上下が元の色が分からないくらい砂にまみれている。セスタスが咥えたまま首を振ると、こ ちらも砂のせいで白髪状態になっていた黒髪が姿を現した。
揺すられても全く意識を取り戻さない森咲だが、呼吸音はセシリスの耳には届いている。
早々に気を失っていた為か、ヘレナが隙間を確保していた為かはわからないが、砂を吸いこんでいることもなく、 こちらも窒息は免れていたようだった。