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来客があったのはその2日後の昼であった。
「あのー、こちらにルジート公女様はいらっしゃいまするか?」
玄関先にはぴょこぴょこと様子を窺う伝書士がいた。
ふわふわのミルクティー色をした髪に、赤い瞳、食べ物の匂いをまとったものと言えば間違いない。
「あれ、エマさんだ。」
2階の階段の踊り場から、いつもの侍女姿で顔を出したのはヘレナだった。
侍女達に交じり、階段の手すりに施してある彫刻部分をから拭きして磨いていたのだ。
さりげなく侍女たちの動きに不自然なものは無いか、監視していたのもある。
ヘレナは階段を一気に駆け下りると、エマをぐいぐいと屋敷の中にひっぱり込んだ。
知り合いの顔に安心したのか、エマの顔は輝いた。
「おや、ヘレナさんはここでお勤めだったでするか?もしかするとセシリスさんも?」
「実は、そうだったんです。」
ヘレナは照れたように笑った。
「それにしてはやけに戻りが早いような気が…。」
エマは首を傾げた。王都で別れてから今日で4日というところだ。とんぼ返りしてもこれほど早くは帰って来られないはずだ。
ヘレナはしれっと答えた。
「あの後急用ができて、街道は通らずに森を抜けて戻ったんです。」
「そうだったんでするか~。ヘレナさんとセシリスさんなら足が早そうでする。」
どこまで彼女が見通しているのかはわからないが、エマはにこにこと笑った。
しかしヘレナも、エマと同じ疑問を持っていた。
彼女が翌日こちらに向かっても、まだ到着するには3日程早い。
「エマさんはお仕事?でも王都からにしてはやけに早くないかな?」
エマは目を細め不敵に笑った。
「ふふふ。速達でする。」
よく見ると葉っぱが至る所についている。
どうやら、エマも森を抜けてきたらしい。
とその時、豪快にエマのお腹の音が屋敷に鳴り響いた。
「早くお渡しして、ご飯を食べたいでする~。」
「ああ、ルーね、ちょっとまって。こっちきて。」
エマは空腹の限界に来ていた。
それを感じ取ったヘレナは食われるのではないかと一瞬どきりとした。
階段を駆け上がりすぐ側にある執務室に連れていくと、中ではルジートと森咲、カレルが応接用のソファに座り書類とにらめっこしていた。

昨日から森咲はルジートにアレキサンドリアについての講義を受けていたのだが、出納局