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「畑?」
ルジートは、切り分けた牛肉のローストを口に運びながら聞き返した。
ヘレナは自分の分を皿に寄り分けると、ソフィーの頼みをそのまま伝えた。
ルジート達は切りの良いところで午前中分の教育を切り上げ、昼食を取るため食堂に降りてきたのだ。
エマも先程しっかり食べていたのだが、皆の昼食に合わせて食堂に残り、果物をつまんでいた。
「確かに、うちの領土だと南の方は小麦が取れるけど、野菜となると春の終わりから秋までのものになるわ。11月からはもう雪だもの。」
「それでも、たくさん畑が出来たら安く食べられるし、いいんじゃないかな。」
「そうね。拓けている土地は畑に、森は冬の防風林だからそこはそのまま開拓は無し。輸入の運送代を考えても畑をつくったものには 奨励金が少し出せそうね。」
「でね、エマさんのお祖母ちゃんが土つくりとかに詳しいんだって。もしかしたら、その土地に合った野菜が何か分かるかもしれないし、 土に手を加えればさらに美味しく出来るんじゃないかな。」
ヘレナは目を爛々とさせていた。
エマはイチゴを飲み込むと首を傾げた。
「レタス、ニンジン、大根、キャベツ、ブロッコリー、白菜、ニンニク、カボチャ、ジャガイモとかでするか? 夏場ならもうちょっと色々できそうでするね。土の作り方はおばあちゃんから聞いてるでする。後はここの土がどういう土地か分かれば大丈夫でする。」
「ほう。」
カレルは先程の失言からエマがルジートに害を成すものかどうかを、注意深く観察していた。 あの失言は、森咲があのような大概の事は気にしない性格ゆえに出たのだろう。
悪気があってやったわけでも、考えなしに言ったわけでもない。
それが分かったカレルは少し警戒を解くことにした。
「じゃあ、その仕事をエマさんに、伝書士の仕事の合間に頼んじゃおうかな。どうかしら。私の専属の伝書士って仕事もあるけど。」
ルジートのその言葉に、森咲は食後の煙草に火をつけ満足そうに一口吸うと
「契約書に入れときます?エマさんへの報酬は代価のほかに食事ってことで。」
と言って笑った。
エマは嬉しそうに微笑んだ。
「うれしいでするね。ここはご飯がおいしいでする~。専属伝書士、悪くないでする
よ~。」
「あら、それはよかった。うちの料理長は腕がいいのよ。じゃあそういうことでいいわね。」
ルジートも笑顔で返す。
「とりあえず、近いうちに王都に向かうから、案内お願いしていいかしら?」