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アレキサンドリアの屋敷の執務室に通されたケンウッド男爵は、嬉しげに微笑んだ。
「これは、お早いですな。」
アレキサンドリア邸の執務室にはルジート、カレル、ヘレナ、森咲のほかにエマの姿もあった。ルジートの深い緑色のドレスはカレルのベストと 色を合わせてあり、並んで座っていると一対の人形のようであった。その横にはお気に入りの藍色の侍女服に身を包んだヘレナと、 かっちりと伝書士の制服を纏ったエマ、そして今日も首までしっかりとフリルブラウスを留め隙のないジャケット姿の森咲が並んで座っていた。 腰の細い3人だからこそ2人がけのソファにも並んで余裕で座れるのだ。
5人はL字型に並んだソファに座りケンウッド子爵が訪れるのを待っていた。
ケンウッド子爵は、先日ルジートの元に来てわずか3日目の昼に呼ばれるとは思ってもみなかった。
森咲の王都での噂は此処まで入ってきてはいない。『鬼女』と称された彼女ならば、4年分の突き合わせなど2日でこなすのだ。
「まあ、密偵を森咲のもとに送り込んでくるぐらいだから、向こうも時間がないんじゃあないかしら。」
あの翌日、侍女の件はすでに森咲からルジートの耳には入っている。
すぐさま森咲の分の鍵を桜子に依頼し、またソフィーより、食事時間が異なった場合の保温器の作成も依頼した。 侍女は泳がせておくということにし、ヘレナが日中侍女姿で監視をしている。
森咲は凝った首をこきりと鳴らすと、煙管の先に詰めた草に火をつけてから一同に確認した。
「あ、吸っていいですか?」
これにはケンウッド子爵も笑いを堪えることができなかったようだ。
ひとしきり声を出して笑うと
「ではこれをお預かりして、エメリット邸と親族の屋敷、レンバー邸を押さえに行きましょう。」
ルジートは頷いた。
「ルカダンにいる兵は全部出した方がいい。ここはあえて領民に聞かせるため朗々と罪状は読んでほしい。」
「あ、これがその罪状です。」
森咲はあくびを堪えながら、ケンウッド子爵に渡した。
ケンウッド子爵が中を確認すると、森咲の王都での恨みつらみも乗っているのか、それはもう達筆で『税献上品等国庫に納めるべきものを着服、 横領の上、アレキサンドリア公の殺害に関与、さらに計画実行の罪で検挙する』といったものだった。
「検挙でよろしいのですか?」
ケンウッド子爵の言葉にルジートはにっこりほほ笑んだ。
「それは親族用。無論、今回の検挙は全員捕らえるためよ。否定はしてくるだろうけど、