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ルジートとカレルが夫人を引きずりレンバー邸を出ると、既に外は薄暗くなっていた。
丁度そこに捕縛成功を伝えに丘を上がって来たケンウッド子爵と遭遇した。
ケンウッド子爵は2人の姿を見つけると馬から降り、深々と頭を下げた。
「ケンウッド子爵!そちらは怪我人なく捕えられたか?」
血で赤く染まりながらも笑顔で駆け寄ってくるルジートと、返り血をほとんど浴びていないカレルのあまりの対照的な具合に、 顔を上げたケンウッド子爵は言葉を失った。
もとよりルジートの怪我の心配はしていない。これだけ動ければということもあるが、カレルが怪我をさせるとは到底思えないからだ。
それにしても、これほど血で汚れていないカレルの攻撃はどの様なものであったのか、ケンウッド子爵は興味を持ってしげしげとカレルを眺めた。
よく見ると、彼の拳とブーツだけが血で汚れている。剣を相手に肉弾戦を挑んだことは明らかだ。いくら室内とはいえ、 レンバー邸の広さであれば剣を振るえないということはない。無傷で仕留めた彼の戦闘能力の高さに、ケンウッド子爵は舌を巻いた。
「こちらはエメリット子爵の方で若干時間はかかりましたが、なんとか無事全員捕える事が出来ました。ルジート様の方も終わられたようでございますね。」
ルジートは一度深く息を吐くと、達成感に満ち溢れた笑顔で頷いた。
「ああ。こちらはこの奥方以外、皆生きてはいない。いざ剣を振るうとあっけないものだったな。」
ルジートの剣は、師匠であるラインに次いで達人の域に入っている。
彼女よりも腕に覚えがある傭兵がいたとしても、奥方が提示した金額では到底雇える額ではない。あっけないのも当然だった。
「皆を労って欲しい。勿論、税金の還元だから、町の者にも酒をふるまってくれ。後、この剣も歯こぼれが酷いから研ぎに出しておいてほしい。」
ルジートは意味深な笑顔をケンウッド子爵に向けた。
先程のルジートとカレルの戦闘時間はそれほどかかっていなかった。にも拘らず、屋敷から出てくるのが遅かったのは、 中央とのやりとりなどの証拠や手がかりがないか、室内を探っていたからだ。