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カレルとエマが戻ってきた頃には、すでに日が傾き始めていた。
そのころにはルジートのドレスを作成すべく採寸などはすでに終わっており、最終的には5着も作ることになっていた。
お針子の徹夜の作業で、明日の昼には1着届くらしい。
2人がルジートの部屋に通されると、生地の見本片手にルジートが紅茶を嗜んでいた。
「お帰りなさい。」
2人の荷物にぎょっとした。
大きな紙袋を一人2つずつ抱えている。
「ど、どうしたの、それ。」
エマはしたり顔で返答した。
「王都の名物でする。なかなか出歩けないと思って買い込んできたでする。」
確かにそうなのだが。
「カレルのも?」
「ああ。出がけにヘレナに言われていてな。お前の屋敷と同じように、食べ放題に食べることが出来ないはずだから、食料は買い込んでおけと。」
「大事でする。ちなみにお昼ご飯とおやつをしっかり食べてきてるので、晩御飯は皆さんと同じ量で大丈夫でする。」
夜食があるでするからねと、エマは含み笑いをした。
エマは自分用にと用意してもらった隣の部屋に、大事そうに買い食い袋を仕舞いに戻った。カレルは自分の買い食い袋をしっかりとルジートの続き間に置くと、エマのトランクを彼女の部屋に持って行った。
その隙にルジートはカレルの買い物袋を覗きに行った。中には見たことのない果物などがぎっしりと詰まっている。
これをエマの勧めを聞きながら買い物していたかと思うと可笑しかった。
「何かおかしいか?」
いつの間にか後ろにカレルが立っていた。
「買いあさってる姿を想像すると可笑しくて。」
「そうか?お前も後で食べよう。」
珍しく顔が綻んでいるところをみると、王都の市場などは楽しかったようだ。
エマの荷物は協会から馬ごと運び、納屋にそのまま仕舞ってあるとのことで、ルジートはカレルとエマが落ち着いたのを見計らってから家人のところに挨拶に連れて行った。
警備の要である詰め所に行くとギュンター、アリョーシャとローランがいた。
3人はルジートの姿に顔を綻ばせたが、続いて入ってきたカレルの大きさに驚いた。
慌てて立ち上がる。
エドモンドより大柄なのは、なかなかアレキサンドリアではお目にかかれはしない。