• ホーム
  • サイト管理者
  • 小説
  • イラスト
  • リスト

翌日は快晴だった。
ルジートの想像通りカレルへの礼儀の叩き込みは明け方までかかった。
森咲曰く、彼は動きの方はすぐに覚えることは出来たのだが、こういうものなのだ、という納得までに時間がかかったようだ。
夜型の森咲は根気よく教えたが、あまりの理解の遅さに最後は
『お腹がすいたら口に入れるのと同じで、礼と言われたらこうするんです。立場や場所によって礼の形がかわるのは、 食べ物だって手づかみで食べる物もあれば、スプーンやフォークを使うこともある。それと同じことです。』
という食べ物がらみでわからせたらしい。
森咲から報告を受けたルジートは、後はおいおい宿で練習するしかないと、結局近道はやめて街道を通っていくことにした。
「私が御者をやりまする。」
朝起きて、森咲とカレルのやつれっぷりにエマは挙手した。
ヘレナとセシリスはたっぷり寝たのか肌艶がいい。カレルのやつれっぷりには、セシリスが横に居るヘレナにぼそっと呟いた。
「群れ社会に馴れてないとこうなるんだな。それになんでも一人で出来るというのも問題だ。人に頼ろうとか、人がどう思っているとか考えないからな。 全て自分のルールで生きる者は、こういうときにしっぺ返しが来る。」
「ほんとにね。頭を下げるってこと自体も経験ないから、相当頭の中ぐるぐるしてるはず。」
群れ社会を経験した上で離れたセシリスと、単独行動しかしたことのないカレルでは、他人に対する考え方にもかなりの隔たりがあった。
同じ爪族のヘレナは単独の点は同じだが、狩り下手なため他人と仲良くしないと分け前をもらえないという点で、他人との接し方は自力ではあるが学んでいた。
「なんだか心配になってきた。」
ヘレナは唸った。
「いや、いい機会だ。もっと他人との接し方を学べばいい。」
セシリスのもっともな意見にヘレナは頷くしかなかった。
「むしろ、ルーがお従兄ちゃんに振り回されなければいいけど。」
2人は嘆息した。
朝食を済ませてから、ルジートは森咲、ヘレナ、セシリスに挨拶をした。
アイーダには屋敷と訪問客は森咲に、外の警備はセシリスに、屋敷内の警備と土づくりについての訪問客はヘレナに指示を仰ぐよう伝えた。
「お弁当できてますよ。」
どうやら二日酔いで痛む頭をおして、ソフィー料理長は弁当を作ってくれたようだ。
バスケットにぎちぎちに詰まっている様子に、エマはうっとりとした表情を浮かべ受け